灯りを絶やすな『Moment of Truth』が今も色褪せない理由
4年間の沈黙のあとに鳴った”本物”の音
1998年3月31日。Gang Starrが5thアルバム『Moment of Truth』を世に出したとき、シーンはすでに大きく様変わりしていた。前作『Hard to Earn』から実に4年。その間にDJ Premierはヒップホップ界屈指のプロデューサーとしての地位を確立し、数々のアーティストのビートを手がけていた。一方GuruはソロプロジェクトJazzmatazzの第2弾をリリースし、それぞれの道を歩んでいた時期もあったという。
そんな2人が再びタッグを組んで完成させたのが、このアルバムだ。ブランクを感じさせるどころか、むしろ「本物とは何か」を改めて叩きつけるような一枚になっている。
Premierのビート、Guruの言葉
このアルバムを語るうえで欠かせないのが、全曲をDJ Premierが手がけているという事実だ。ジャジーなサンプリングとタイトなドラムという、Gang Starrならではのスタイルはそのままに、よりストリートの手触りを強めたビートが並ぶ。
そしてGuruのラップも、キャリアの中でも屈指の出来だと評されている。落ち着いたトーンでありながら、言葉の一つひとつに説得力が宿る。誇張せず、しかし芯を食ったリリックの数々は、聴くたびに新しい発見がある。
特に有名なのが、アルバム中盤に置かれたスキット的な一節。サンプルクリアランスを巡る業界の姑息なやり方を痛烈に批判し、「アンダーグラウンドは永遠に生き続ける。俺たちはゴキブリみたいなもんだ、決して死なず、生き続ける」と言い放つくだりは、Gang Starrというグループの矜持そのものを表している。
豪華すぎるゲスト陣
もう一つの特徴は、過去のGang Starr作品と比べてゲストアーティストの数が格段に多いことだ。Inspectah Deck(Wu-Tang Clan)、Scarface、Freddie Foxxx、M.O.P.、Big Shugなど、東海岸ハードコアの猛者たちが顔を揃える。さらにK-Ci & JoJoが参加した楽曲もあり、硬派なイメージのグループとしては意外な一面も見せている。
それでいて、誰か一人が目立ちすぎることなく、アルバム全体の統一感がきちんと保たれているのが見事なところだ。
商業的にも成功、そして伝説へ
『Moment of Truth』はビルボードのR&B/ヒップホップチャートで1位を獲得し、Gang Starr史上もっとも商業的に成功した作品となった。シングル「You Know My Steez」や「The Militia」は今なお多くのDJにプレイされ続けている定番曲だ。
批評面でも高く評価され、後年には「彼らの最高傑作」「ヒップホップ史に残る名盤の一つ」として語られることが多い。全20曲、約78分という長尺ながら、最後まで緊張感を保ったまま聴かせるのは並大抵のことではない。
今聴くべき一枚
派手な演出やトレンドに頼らず、ビートとリリックという最もシンプルな要素だけで勝負した『Moment of Truth』。だからこそ、リリースから四半世紀以上が経った今聴いても、まったく古びて聞こえない。
ヒップホップの”本質”が何なのか迷ったときは、このアルバムに耳を傾けてみてほしい。Guruの声とPremierのスクラッチが、きっと答えを教えてくれるはずだ。
次回も、名盤をディギン

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